
「演出助手をやったことがあります」と言っても、その人が小劇場でやってきたのか、商業演劇でやってきたのかで、経験している業務はけっこう違います。
現場に入ってから「思っていた仕事と違う」と感じるとき、その理由がこの違いにあることもあります。
「演出助手をやったことがあります」と言っても、小劇場出身か商業出身かで、経験してきた業務はかなり違うんです。
この記事で分かること
- 商業演劇と小劇場で、演出助手の役割はどう違うのか
- 稽古前・稽古中・劇場入りの3つの時期ごとの業務の違い
- どちらの現場を経験するかで、身につくものがどう変わるのか
大きな役割の違いはこの1点
まず、いちばん大きな違いから。
- 小劇場:制作業務を兼ねる場合が多い
- 商業:進行することに特化している
小劇場=制作業務を兼ねる / 商業=進行に特化。まずこの1点だけ押さえてください。
ここが分かっていると、細かい業務内容の違いも理解しやすくなります。以下、稽古前・稽古中・劇場入りの3つの時期に分けて見ていきます。
なお、ここで挙げるのはあくまで比較的よく見られるものです。実際の現場によって変わってきますので、ひとつの目安として覚えておいてください。
稽古前の業務の違い
| 小劇場 | 商業 | |
|---|---|---|
| 稽古場 | 稽古場の確保(地域センターなど) | — |
| スケジュール | キャストのNG回収/稽古スケジュールの作成 | NGをもとに稽古スケジュールの作成 |
| 打合せ | スタッフとの情報共有 | 演出家や他セクションと、必要な打合せの相談 |
| 資料 | 台本の印刷 | 香盤表などの資料作成 |
小劇場でいちばん目につくのが稽古場の確保です。地域センターなどを押さえるところから演出助手の仕事に入ることが多い。商業では、この部分は基本的に演出助手の担当ではありません。
一方で商業は、稽古が始まる前の段階から資料作成と打合せの相談が業務に入ってきます。
※「NG」はキャストが稽古に出られない日のこと。「香盤表」は誰がどの場面に出るかをまとめた表です(詳しくは香盤表とは)。
稽古中の業務の違い
| 小劇場 | 商業 | |
|---|---|---|
| 稽古の進行 | — | 稽古進行 |
| 記録 | 稽古動画撮影・タイトル付け/稽古動画アップ | 稽古動画撮影・タイトル付け |
| 台本まわり | テキレジなどの整理と共有 | テキレジや各種資料の更新/展開(演助からの補足が必要な時) |
| スケジュール | 日々の稽古スケジュール作成と連絡 | 日々のスケジュール作成 |
| 連絡 | テクニカルスタッフとの各種連絡・やり取り/必要な打合せの相談 | テクニカルスタッフとの各種連絡・やり取り/必要な打合せの相談 |
| その他 | いないキャストの代役/衣裳や小道具の買い出し | — |
※テキレジは、稽古の中で出てきた台本の修正のことです。
違いがはっきり出るのがこの時期です。
商業の側にだけ 「稽古進行」 という項目があります。演出助手が稽古そのものを進めていく、という役割が明確にある。
対して小劇場の側には、いないキャストの代役や衣裳・小道具の買い出しが入ってきます。これはまさに、冒頭で書いた「制作業務を兼ねる」の中身です。
✅ ここが一番はっきり出る違い
商業の表にだけ「稽古進行」という項目があります。演出助手が稽古そのものを進めるという役割が、はっきり存在しています。
小劇場は代わりに代役・買い出しが入ってくる。これが「制作業務を兼ねる」の中身です。
劇場入りの業務の違い
| 小劇場 | 商業 | |
|---|---|---|
| 主な業務 | 楽屋づくり/舞台仕込み手伝い/衣裳・小道具のケア/当日運営の手伝い | 場当たり進行/テクニカルスタッフとのやり取り/初日が開けるまでの作品内容の確認事項を整理・進行 |
劇場に入ってからは、ほとんど別の仕事に見えるくらい違います。
小劇場では、楽屋づくりから舞台仕込みの手伝い、当日運営の手伝いまで、手が足りないところに入っていく動き方になります。
商業では、場当たり進行が演出助手の中心業務です。加えて、初日が開くまでに確認しておくべき作品内容の事項を整理して、進めていく役割があります。
演出助手には、もともと2つのパターンがある
この違いは「どちらが上か」という話ではありません。求められている役割が違うだけです。
そもそも演出助手には、目指す将来性によって2つのパターンがあります。
- 演出家になりたい演出助手:演出補のような役割が多い。小劇場に多いパターン
- 演出助手になりたい演出助手:作品と稽古の進行管理が業務の中心。商業演劇でスタッフィングされることが多い
自分がどちら側に行きたいのかによって、選ぶ現場も変わってきます。
そして、経験する現場によって身につくものも変わります。小劇場を経験すると、いろいろな業務を幅広くカバーする力がつきます。商業では、進行という一点を深く求められます。
まとめ
- 大きな役割の違いは、小劇場=制作業務を兼ねる/商業=進行に特化
- 稽古前:小劇場は稽古場の確保から。商業は資料作成と打合せの相談から
- 稽古中:商業には「稽古進行」がある。小劇場には代役・買い出しが入る
- 劇場入り:小劇場は楽屋づくり・仕込み手伝い・当日運営。商業は場当たり進行
- ただし現場によって変わるので、あくまで目安として
そもそも演出助手のギャラは何に対して払われているのか、という話は演出助手は何に対してギャラをもらっているのかにまとめました。
小劇場から入っても、商業から入っても、そこで身についたものは次の現場で必ず効いてきます。まずは目の前の現場が自分に何を求めているのかを掴むところからです。
どちらの現場でも共通して必要になるのが、香盤表やスケジュール表といった資料です。僕が現場で実際に使っている書式をテンプレートにしてあるので、よかったら使ってみてください。

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