こちらの記事は2017年の公演でのケースを元に作成しています。最新版の資料が見たい方は↓こちらから!

2023年にZOOMにて実施した演出助手WSの映像を「演出助手の教科書」として動画教材にさせて頂きました。
“真似するだけで明日から稽古が回せる”、分かりやすく、WS(ワークショップ)形式でご自身でも考えながら進めて頂ける内容になっています。

<金額>
¥29,800(税込み)

「演出助手の教科書」の詳細を見る


【演出助手】


<はじめに>
小劇場だと、ボランティアでまかなわれていたり、もしくは役職自体がなかったりするポジションです。しかし、実際はその存在価値は大きく、稽古を円滑に進めていく上で重要な役割を果たします。場所によって仕事の内容が多岐に渡るため、決まった仕事というのはないと思いますが、演出助手は稽古の進行に必要な業務を細かく作り上げていく役職です。

 ☆演出助手は稽古を円滑に進めるために必要な役職だと理解する!


▼<全体稽古スケジュールの作成>▼

出演者のNGの状況から、稽古スケジュールを組んでいきます。
様々な要素を考慮して、スムーズかつ実現可能な組み方をしていきます。


演出家を始めとした各スタッフとしっかりと事前の打ち合わせをします。
演出家によって“稽古時間の使い方”に違いがあったり、作品によっては“必要な演出を実現するために踏まないといけない段取り”があったりと、稽古進行において考慮すべき要因が多々あります。
今回の場合は、長谷川が演出と演出助手の仕事を兼任していたので、確認の時間は必要としませんでしたが、実際に組んだ稽古スケジュールと合わせて、重要な点を整理していきます。
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必ず入れなければならないスケジュールから“逆算”して全体を組み立てる!

★全体スケジュール表のテンプレ★


実際に今公演に使用した全体スケジュール表を元にしたテンプレートです。


▼<各打ち合わせへの参加>▼

美術や音響、照明といったテクニカルの打ち合わせには必ず参加します。
その上で、組まなければいけない段取りや、あらかじめ連絡を通しておかなければならない事項を確認しておきます。


今回の場合は、「演出」と兼任しての業務でしたので、基本的に「演出」として行った打ち合わせがそのまま「演出助手」の仕事に降ろされる形でした。
その上で、各セクションに今回の公演で考えているものが実現可能か確認していきました。
音響へは、手数が多い芝居になりそうでしたので、3団体のショーケース公演になることを踏まえてどれくらいのものが現実的か、“稽古が始まる前”には確認していました。
照明へは、プロジェクターを使用する関係で、明かりとの共存がどれくらい出来るものか事前に確認をしました。
舞台監督へは、「ポリッドスクリーン」というものを使用したい旨をお伝えして、どういう方法が取れるか事前に確認をしました。
このように、一部の内容にはなりますが、“作品・稽古が実現可能なように段取りをしていくために“、打ち合わせに参加します。

☆打ち合わせにただ参加するのではなく、 “作品・稽古が実現可能なように段取りをしていくために“何をしなくてはいけないか考えながら打ち合わせに参加する!


▼<香盤表の作成>▼

香盤表という、出演者が台本上のどのページのどのシーンに出演してどのようなテクニカルの行程があるのかを一つの表にまとめたものを作成します。
香盤表があるかないかで、作業効率が大きく変わります。


実際に香盤表を使用するのは「演出助手」や「演出部」がメインになってくるので、必要性がなかなか伝わりづらい部分ではありますが、長谷川の場合香盤表があると、“稽古日程が圧倒的に組みやすくなる”ので重宝しています。


↑実際に使用した香盤表がこちらになります。
(この時は、長谷川のみしか使用をしなかった関係で、かなり簡略化して作成・使用しています。ご了承くださいませ、、、。)

特に、抜き稽古でスケジュールの調整をする際、どのシーンにはどの人が出ていて、このシーンとこのシーンを稽古すれば待ち時間がなく稽古ができるな、などといった判断をすぐにすることができます。
また、今回の芝居で作った香盤表には、長谷川が色々と兼任していた関係もあり時間が足りず入れ込まなかったのですが、「歌やアクションがあるシーン」、「セットチェンジがあるシーン」、「映像があるシーン」なども一緒にまとめておくと、該当のシーンの稽古や確認をする際、漏れなく進行をすることが出来ます。

また、稽古場に張り出すようにしたり、配布するようにしておけば、次はどこどこのシーンをやります、と言ったときに出演者の方も確認がしやすくなるので便利かと思います。
実際には、演出助手だけでなく演出部が利用したりする場合もありますので、早替えや転換のタイム、出道具の出し入れの有無・担当などを入れ込んで劇場に入ってからも使用出来るように整理していく場合もあります。

☆何のために使用するものなのかを把握し、以降の業務の効率を上げる!

★香盤表のテンプレ★


実際に今公演に使用した香盤表を元にしたテンプレートです。


▼<小道具リストの作成>▼

劇中で使用する小道具のリストを作成しておきます。
リストにしておくことで、必要なものがすぐに分かる状態を作っておきます。


↑実際に作成した小道具表です。今回は準備が全て長谷川で、自分が分かれば良い仕様だったため、かなり簡略して作成しています。必要事項も埋めきっておりませんがご容赦くださいませ、、、。

小道具リストは、稽古が始まる前に作成しておきます。(台本が完本している前提)
その上で、事前に用意できるものは用意して、用意できないものは“仮の小道具”を必ず用意しておきます。
リストには、「準備状況」「使用する人」「出捌けのタイミング」「代用品」「備考」の欄を作るようにしています。準備が出来たものから準備状況にチェックを入れていき、出捌けのタイミングも入れるようにすると、稽古の際に確認がしやすくなります。
また、小道具類は稽古時は各自、本番時は舞台袖等で自己管理になる場合もありますので、誰がどの小道具を担当しているのかも「使用する人」を明確にしておくことで分かりやすくしておきます。
また、リストにしておくことで、後半の稽古に入ってきて足りていないものなどを演出と確認する際に“漏れがなく”準備を進めることができます。

☆リスト化して、“漏れがない”ように準備と確認を!

★小道具表のテンプレ★


実際に今公演に使用した小道具表を元にしたテンプレートです。


▼<稽古場進行>▼

稽古場での稽古の進行をします。
スケジュールに沿って、時間を区切りながら進行をします。


長谷川がいつも意識していることは、当たり前ではありますが“稽古場で起こった出来事を忘れない”ということです。
演出家が出演者にオーダーした言葉や、ミザンス、テクニカルへの希望を記憶する、もしくはいつでも思い出せるようにしておきます。
そのために、毎回メモ用の紙を用意しています。ノートなどでも良いと思いますが、A4の用紙に簡単にチェック事項を入れた紙を毎回使用するようにしています。
それをクリアファイル等に入れておいて、復習や情報共有の際に使うようにしています。
稽古場では毎日新しいことが起こりますので、演出助手が事細かに出来事を覚えておくことで、“情報共有の要”になることができますので、伝達の齟齬が起こりにくくなります。
また、これを徹底していると、自然と自分のところに情報が集まってくるようになりますので、自分が進行をしやすい環境作りをすることもできます。

☆“稽古場で起こった出来事を忘れない”ように努め、“情報共有の要”になるように意識する!

★稽古場メモのテンプレ★


実際に今公演に使用した稽古場メモを元にしたテンプレートです。


▼<週間稽古スケジュールの作成>▼

全体の稽古スケジュールとは別に、週間での稽古スケジュールを立てます。
日々新しいことが起こり、進行状況に変化が出てきますので、1週間ごとで区切ると進行の目処が立てやすくなります。


長谷川のやり方だと、1週間ごとにスケジュールを新たに出すようにしています。
細かくタイムテーブルを作ることで、見やすく作ります。
実際に使用した週間スケジュールを見ていきます。
①1週目

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☆細かくスケジュールを区切って、 “稽古場で明確な理由を持って時間の使い方の提案を”!

★週間スケジュールのテンプレ★

実際に今公演に使用した週間スケジュールを元にしたテンプレートです。


▼<Mリストの作成>▼

劇中で使用する音をリストにまとめます。
仮の音でも、用意できるものは用意し、稽古場で流せるように手配します。


台本を読み、あらかじめ必要になるM(楽曲)とSE(効果音)をリストアップします。
音響さんと連携して、簡単なSEなどはあらかじめもらっておくようにして、稽古場で実際に流せるように手配します。
Mに関しては、長谷川の場合iTunesで購入してしまうことが多いです。
(既存のMの著作権、JASRACへの申請等は適宜行います。今回は詳細はとばします。)
今回使用したMは、著作権フリーのものを全て使用したので、いくつか候補を用意して稽古に入りました。
今回は、合わせて90近く音響のQがありましたのでそれらを全部リストにまとめて音響さんと共有しました。稽古を進めていく中で、追加で入れていきたいSEやMが出てきますが、稽古が始まる前の段階である程度のあたりをつけておきます。そうすることで、音響さんもどの程度の作業量があるのかを把握しやすいですし、直前で作って欲しい音をたくさんお願いしないといけない、というような無茶な事態を防ぐことができます。

細かいですが↑実際に使用したMリストです。Mリストの中には「音を入れるきっかけ」「音を消すきっかけ」を詳細に入れるようにしています。上記のリストは、稽古前に組んだリストから更新が追いついておらず、細かいきっかけなどが抜けていたりの状態です。ご了承ください。
手間はかかりますが、打ち合わせの時間を短くすることができますし、事前にリストを渡しておくことで、お互いに準備をした上で稽古や、音響の作業に入ることができるようになり、無駄な時間を減らすことができます。

☆きっかけまで細かく記載して、無駄な時間を減らせるように意識する!

★Mリストのテンプレ★


実際に今公演に使用したMリストを元にしたテンプレートです。


▼<きっかけ台本作成>▼

音響・照明・映像・舞台、各セクションのきっかけをまとめて記載した台本を作成しておきます。打ち合わせや場当たりの際にこの台本を見れば全てのきっかけがまとまっている状態を作っておきます。


今回の場合、音響の手数が多かったのと、映像の使用がありましたので、
・音響台本
・照明・映像台本
の2つに分けて作成しました。
それぞれきっかけをリストにまとめて色分けをしておき、台本上できっかけのところで対応した色を用いて詳細を入れ込むようにしました。
照明・映像台本は、あらかじめこのような明かりが欲しい、というのを①から番号をつけてリスト化しておき、台本上に番号を入れ込んでいって確認してもらうようにしました。

  

↑が実際のリストと、きっかけ台本の一部になります。今回の場合は3団体で共有の明かりを使うことになるので、ある程度明かりの場所とニュアンスを限定した状態で打ち合わせができるようにしておきました。
両方とも手間はかかりましたが、やはり打ち合わせは非常にスムーズに行うことが出来、当日の場当たりまで良い流れをつくれました。
通常の稽古で使用する台本とは別に、このようなきっかけ台本を用意しておき、テクニカルの情報を、過多なぐらいに書き込んでおくと打ち合わせや確認がスムーズに行くようになりす。
これらを作る際には、事前に各セクションにお送りして確認してもらいますので“誰が見ても分かるようにまとめる”という点が非常に重要です。

☆“誰が見ても分かる”きっかけ台本を用意し、作業の効率化を!


▼<スタッフ連絡>▼

スタッフの皆様に稽古での変更点や、スケジュール等連絡していきます。


最近だとLINEでの連絡が多くなってきていますが、長谷川がいつも気をつけているのは、“伝達漏れがないようにする”という点です。
そのために、“連絡の必要がない”と思う人にも必ず共有してご連絡をするようにしています。
本当にいらない情報は流しませんが、この人には言ったけどこの人には言ってない、という情報が絶対に無いような環境作りをします。こちらは連絡の必要がないと思っていても、実は連絡をして欲しかった、という場合もあるので注意します。
メールでの連絡の際は、CCもしくはBCCに各スタッフを入れて情報を共有するようにします。
スケジュールの連絡などは特に気をつけます。
今回の場合は、映像の使用・ポリッドスクリーンの使用などありましたので、吊り位置等含め各セクションに、演出の希望などを伝えられるように資料の用意や打ち合わせのセッティングを事前に情報を共有して行うようにしました。

☆その場その場の連絡手段で、“伝達の漏れがないよう”に連絡する意識を!


▼<稽古場映像共有>▼

稽古場での映像を毎回共有するようにします。
出演者の復習や確認、演出のチェックなどが出来るようにします。


稽古場の映像を毎回共有するようにします。
演出をつけるときに、自分がつけた段取りを忘れてしまう場合があります。
それをカバーするために演出助手が活躍する場合もあるのですが、その際に映像を保存しておくと非常に確認がしやすくなります。
現在だと、YouTubeの「限定公開」の機能や、LINEでも動画の共有の機能が使えるようになりましたので、非常に便利になってきました。
その中でも長谷川は基本YouTubeGoogleDriveを利用するようにしています。
なぜなら、これは特に出演者の方のための場合ですが、移動中などにスマホで見る方が多かったりします。そうすると気になるのが通信量の問題です。YouTubeを使うと、“画質を選べる“機能がありますので、通信量を気にして見れない、といった状態を若干ですが防ぐことができます。
ただ、YouTubeですと音楽の著作権などで引っかかってしまい見れない場合があるので、その際はGoogle driveを利用しています。


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OOM Q8

こちらのカメラを稽古場映像を撮るようでいつも使用しています。
マイクもしっかりついていて、広角も180度ありますので、手狭な稽古場でも端から端まで映像を撮ることができます。
現在だと、もっと使い勝手の良いカメラが多々ありますので、手頃なものをぜひ探してみてください。

スタッフさんとの打ち合わせの際も、常にこちらで撮った動画を出せる状態にしておいて”絵を見ながら打ち合わせをできる“環境を必ず作ります。
出演者、スタッフ、どのセクションにとっても、稽古や作業を円滑に進める材料に出来るので、必須の業務だと思います。

☆様々な手軽な共有の方法があるので、どんどん利用して、すぐに”絵を出して確認できる“状態をつくる!

以上が演出助手業務に関しての長谷川の仕事術です。
皆様の公演のお役に立てましたら嬉しいです。
この仕事術は、あくまで長谷川独自の方法となります。これが絶対に正しい、というものではありません。
こちらをぜひ利用していただいて、各々の良いと思う仕事術を探って頂ければ幸いです。

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ざっくばらんな相談に、演劇歴14年、関わった現場は100以上、何とか個人事業でやってきた現役の演出助手がお答えします。

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