「演出助手になりたいのですが、どうすればいいですか?」
相談窓口によく届く質問です。結論から言うと、演出助手になるための資格や採用試験はありません。ただ、だからこそ「じゃあ何をすればいいの?」が分かりづらい仕事でもあります。
この記事で分かること
- 演出助手はどんな立場・役割の仕事なのか
- 最初の仕事はどうやって取るのか
- 誰から仕事をもらえるようになるのか
そもそも演出助手とはどんな仕事?
演出助手は、ひとことで言うと「作品と稽古の進行管理」をする人です。BMGでは「橋渡しをするための言葉を知っている人」と説明しています。
よく業務を一緒くたにされがちな「制作」との違いは、ざっくり言うとこうです。
- 演出助手:作品と稽古の進行管理
- 制作:企画の進行管理
また、ひとくちに演出助手といっても、目指す将来性によって2つのパターンがあります。
- 演出家になりたい演出助手:演出補のような役割が多い。小劇場に多いパターン
- 演出助手になりたい演出助手:作品と稽古の進行管理が業務の中心。商業演劇でスタッフィングされることが多い
“演出助手”という名前ですが、その役割は演出の助手業務だけではないのです。役割の全体像は別の記事でも紹介しているので、まずは「進行管理の専門職なんだ」と思ってもらえれば大丈夫です。
演出助手になるには資格はいらない
日本にいる演出助手のほとんどはフリーランス(個人事業)です。会社に雇われる会社員ではなく、個人が「なろう」と思ってなった形が演出助手、ということになります。
なので、極端に言えば——名乗ったらもう演出助手です!
ただ、名乗っただけでは仕事はありません。実際のところ、仕事を取ってこないとなかなか名乗りづらいのが正直なところだと思います。では、最初の仕事はどうやって取ればいいのでしょうか。
最初の仕事は「誰かに連れて行ってもらう」が多い
僕の見てきた範囲では、最初の現場は“誰かに連れて行ってもらう”ケースが多いです。具体的には、
- 演出家に弟子入りして現場に入る
- 演出助手に弟子入りして現場に入る
- 大学や専門学校に入って、学校のツテで現場に入る
などが主なルートです。演出助手としてのスキルを学びながら、自分の営業もしていった先に、演出助手の仕事があります。
また、生活ができるギャランティを求めなければ、ネット検索などで応募できる案件もあると思います。お手伝いのような業務が多くなるかもしれませんが、まずは経験として、そういったところから試してみるのもありです。
※ひとつ注意点。劇団などの現場では、このサイトやマニュアルで解説しているような演出助手の業務自体を「知らない」という場合も多々あります。現場によって求められることが違う、という前提は持っておいてください。
演出助手は誰から仕事をもらえるのか
演出助手に仕事を依頼するのは、主に次のような相手です。
- 興行を主宰する企業
- 劇団
- 演出家
- プロデューサー
そして、現場に入れるようになったあと、次の現場に繋げてもらいやすいのは「演出家」「プロデューサー」「制作」の3者です。この中の誰かにある程度の評価をいただける仕事ができると、他の現場にもお声掛けしていただける可能性が高くなります。
もちろん、他のセクションのスタッフさんから繋いでいただける場合もあります(僕の場合、その割合は比較的少なかったです)。
いずれにしても、演出助手の仕事は基本的に個人で持ってこなければならない場合が多いです。「すべての現場で一定の評価をいただけるように業務に当たる」——この意識が、結果的にいちばんの営業になります。
現場に入る前にできる勉強
「まだ現場に入れる実績がない」という時期でも、できることはあります。
- 書籍で知識を蓄えて、観劇でその知識を確認する。舞台監督・照明・音響など各分野の入門書を読んでから劇場に行くと、見えるものが変わります
- 劇場に行ったら客席をぐるっと一周してみる。音響・照明のブース、吊ってある機材、舞台セット。観劇前に分析するだけで学びが全然違います(他のお客様やスタッフの迷惑にならない範囲で)
- 稽古場に入れるようになったら、スタッフさんが「どういう資料を」「何のために」使っているか理解する。人の仕事の流れが分かると、先読みして段取りが組めるようになります
そして何より大事なのは、常にいろいろなことに“疑問を持つ”こと。持った疑問をひとつずつ解消する努力を積み重ねていくと、知識と経験が自然と増えていきます。
まとめ:入り口は開いている。あとは準備
- 演出助手になるための資格はない。ほとんどがフリーランスで、名乗ったらもう演出助手
- 最初の仕事は「誰かに連れて行ってもらう」ルートが主。弟子入り・学校のツテ・応募案件
- 次に繋げてくれるのは演出家・プロデューサー・制作の3者。評価がそのまま営業になる
現場に入ることが決まったら、道具の準備はこちらの記事でどうぞ。
具体的にどう評価される働き方をするのか、稽古の立ち上げから場当たりまで各場面で何をすべきか、ご相談の際にどんな言葉と順序を選ぶのか——そういった実務の中身は、現在制作中の演出助手マニュアルで詳しく扱っています。
関連リンク
- 図解はXで週2本ペースで公開しています → X @BMG_Hasegawa
- 現場でそのまま使える香盤表などのテンプレ → 舞台演劇テンプレ集
- 演劇のお仕事についての相談 → 演劇相談所