現役の演出助手の長谷川がなんでもかんでもご相談に乗ります!

ざっくばらんな相談に、演劇歴14年、関わった現場は100以上、何とか個人事業でやってきた現役の演出助手がお答えします。

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【制作業務】

<はじめに>
制作業務の仕事を書いていくにあたって、長谷川が気をつけていることが、昨今よく言われている話ではありますが、
「当日運営」と「制作」はまったくの別物の業務
ということです。
併せて、これは言葉の使い方の問題ですが、
「当日運営」を「当日制作」と言うのは多分違う。
「制作」の仕事は、“環境づくり”だと長谷川は考えています。
出演者・スタッフが作品に集中して取り組める環境、作品を上演する環境、お客様が安心して観劇をできる環境、これらを創るため、なにをしなくてはいけないかを常に考えます。
「制作」の仕事をそう考えたときに、「当日制作」って言葉として意味がわからなくなってきます。
そんな考え方をベースに、今回公演で長谷川が触った「制作」業務を見ていきます。

☆「制作」の仕事は「当日運営」とは違う、すべての“環境づくり”である!

▼今回の場合、「票券」「当日運営」の部分は「劇活!2017」の方でまかなっていただきましたので、それ以外の部分の業務を見ていきます。▼


▼<予算管理>▼

公演を始めるにあたって、まず誰もがぶつからなくてはならない“お金”の問題。
予算の配分次第で公演の良し悪しが決まるといっても過言ではありません。
先に触れた、主宰業務の中の「企画書」の段階で“どのような公演にしたいか”が明確になっていると、配分がしやすくなります。
長谷川は、「Excelのオリジナルの予算表」を利用して管理をしています。

↑こちらが実際に使用した予算表になります。所々の事情により金額等はモザイク処理をさせていただきます。

予算を組むにあたって、まずは予算総額を出すことになりますが、その際チケット収入が主な予算の元になると思います。
長谷川の場合、“総集客可能数の70%”の数で総予算を組み、そこから得られた数字を分配していきます。
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☆“総集客可能数の70%”の数で総予算を組み、“赤字を出さない”分配を徹底する!

★予算表のテンプレ★


実際に今公演に使用したデータを元にした予算表テンプレートです。


▼<打ち合わせ準備>▼

公演の企画が始まってくると、出演者・スタッフ等、公演関係者と打ち合わせをする機会が多くなってきます。
その際の、打ち合わせ場所の予約や、必要な資料の印刷・準備など抜けがないように行い、“無意味な打ち合わせ”をいたずらに増やさないように気をつけます。短期間で多くのことを処理する舞台公演において、「Time is Money」は徹底すべきです。


このあたりは、長谷川の仕事術というよりも、大体の人がやっていることとは思います。
・人数分の資料を印刷してまとめて持ち込む
・打ち合わせに集中できる場所を選ぶ
・あらかじめ打ち合わせる内容を決めておく
等等、スムーズに打ち合わせを出来るように準備をします。
打ち合わせ内容をリストアップして印刷していったり、事前にメール等で共有しておくなどしておいても良いと思います。
また、打ち合わせ後に議事録を残せるように、ボイスレコーター等を順備しておいても役に立ちます。

☆Time is Money!


▼<出演者NG管理>▼

稽古日程や取材のスケジュールを組むために、出演者のNGを集めます。
数が多くなってくると、きちんと整理をしないと管理ができなくなってくるので、整理するための方法をあらかじめ考えておきます。


これはオファーの段階からになりますが、“NGを出すのが当然”という環境を作ってしまうのは、今後のスケジュールに支障をきたす場合が多いので、出演者にそう思われてしまうような聞き方をするのは控えたほうが良いかと考えます。

また、これは出演者側の話になりますが「稽古日程は○~○の□時~、参加条件としてこの日程に参加できる方」というような募集要項にも関わらず、オーディション等に通った段階で、「全日遅れてしか参加できません」などと言い出すのは、関係者全員に迷惑がかかりますので絶対にやってはいけないという意識を持ったほうが良いと思います。
NGに関しては、参加が決まる前にあらかじめ相談しておくのがベストです。
9:00出社の会社に入社して、「10:00にしか出勤できません」なんて会社ではありえませんからね。

これらを踏まえて、オファーの段階で適切なやりとりを経て、「どうしても難しい日時のみ」NGとして受け入れる体制がスムーズな稽古の進行の地盤になっていきます。

NG回収をする際に、下記のような文言も付け足すと正確なNG日時の回収がしやすくなります。

提出の際はOKではなく、“NGの日時をご記入ください”。前後で移動を含む場合はそれらを加味してのNGのご記入をお願いいたします。

ただ、小劇場俳優の皆様は生活環境様々にあると思います。それは私も経験しているのでとてもよくわかります。なので、誤解がないように最後付け足すと、“NGを出すことがダメなのではなく、報告・連絡・相談を事前にしないこと”がよくないということだけ加えさせていただきます。

☆NGを出演者から集める段階で、“NGを出すのが当然”という環境にはせず、どうしても参加が難しいところを聞き出す!

★NG管理表のテンプレ★


実際に今公演に使用したNG表を元にしたテンプレートです。


▼<スケジュール調整>▼

出演者のNGを集め終えたら、それを元にスケジュールを調整していきます。
主宰業務<スケジュール作成で立てた大枠から当てはめていきます。


今回の場合、当て込まなければならなスケジュールが、
・ビジュアル撮影
・稽古スケジュール
・劇中で使用する音声素材の録音
※声のみの出演、ということでオファーを出していました。
・インタビュー動画撮影
・PR動画撮影
これらになりました。


↑実際に作成したスケジュール表です。
※同時に入れ込んでいる“稽古日程”などの稽古関連の入れ込みに関しては「<演出助手業務>全体スケジュールの作成」に別途記載しております。

長谷川のやり方は、とにかく当て込むスケジュールから“逆算して組み立てる”です。
さらに逆算するにあたって、“それぞれにかかる時間・日数”を正確に、かつ、余裕を持って取るようにし、“無駄のない最短のスケジュール”を作れるように意識します。
各セクションのことや、稽古の進行・内容、公演に関して“広く理解をしている”必要があるので、簡単なようで実は難しく大事な作業の一つなのではないかと考えています。
今回は、「広報系のスケジュールを7月中に全て終わらせ、8月からは稽古に集中する」、という目標のもと作成しました。

☆当て込むスケジュールから“逆算して、無駄のない最短の組立て方”をする!
“それぞれにかかる時間・日数”を正確に把握・予想が出来るように、日頃から視野を広く持っておく!

★全体スケジュール表のテンプレ★


実際に今公演に使用した全体スケジュール表を元にしたテンプレートです。


▼<稽古場・各種場所の確保>▼

スケジュールが固まったら、合わせて場所の確保をしていきます。
“ストレスなく、進行ができるような場所を適宜選択”し、予約等を進めていきます。


演劇の稽古において、もっとも悩む点と言っても過言ではない稽古場の確保
今回は稽古以外の内容もあり、用途としては、
・稽古
・インタビュー動画撮影
・顔合わせ、読み合わせ
・録音
・PR動画撮影
がありました。
稽古等は地域センターなどを利用する団体が多いかと思いますが、録音・PR動画撮影に関しては、地域センターでは難しかったため、専用の施設を探し予約しました。

場所を選ぶ際長谷川が気にする点は、
・演劇利用(こちらが目的とする内容)が可能な場所か
・駅から近い場所か
・広さ、設備の情報が十分にあるか
・金額
などの点です。

地域センターなどで特に多いのですが、

○○Aの部屋と○○Bの部屋があり、○○Aの部屋をとったところ、○○Bの部屋とは薄いパーテーションで仕切られているだけで、となりの団体の迷惑になってしまうため稽古にならなかった

などといったことがあります。
他にも、「演劇利用可」という場所ですが声は抑えてください、といった場所もあります。
地域センターの部屋自体が、演劇用に作られているわけではありませんので、“防音”が整っている場所が少ないためこのようなことがおこります。
また、地域センターという性質上、住宅街の中に立地している場所が多く、近隣住民からのクレームの対象となるため特に厳しいです。

実際に利用したことがある場所ならいいですが、初めて利用する場所は“事前に電話をして細かく確認”をするところまでしたほうが良いかと思います。
それでもいざ現場に行ってみると思っていた場所とは違う、ということもあります。
そのため常に、”最悪の場合の当日の段取り・スケジュール”を考えておくようにするというのは意識しています。

録音・PR動画の撮影は初めて利用するスタジオで両方とも行いましたが、やはり事前の調べと違う部分が多く、この意識はとても役にたちました。

☆“ストレスなく、進行ができるような場所を適宜選択”し、常に”最悪の場合の当日の段取り・スケジュール”を考えておきながら場所を選ぶ!


▼<出演者へ台本等資料の送付>▼

台本・稽古スケジュールは、必ず事前に出演者に“紙面”でお送りするようにしています。
データの送付でまかなうことが多くなってきましたが、それでも“紙面”で手にとってもらうことは徹底しています。


資料の送付の際にかかってくる段取りとして、
・印刷
・郵送
があります。
どちらも費用がかかるものですが、“短時間でなるべく安く”済む方法を長谷川は利用しています。

まず、「印刷」に関してですが、長谷川は「レーザープリンタ」を導入して自宅で印刷してしまっています。
長期的にみると外注したりするよりも安く上がります。
参考までに、当時使用していたレーザープリンタはこちらです。


※中古で購入したので、安めに収まっています。

サイズ的にも、個人でも問題なく利用できます。
事務所がないから、といった心配もありません。
少し初期投資が必要になりますが、何種類か試してみて、気に入ったタイプのものを繰り返し使うのがおすすめです。
レーザープリンタは、これが2種類目で、通常のプリンタは4種類目になります。

次に「郵送」に関してですが、日本郵便の「クリックポスト」を利用しています。


http://www.post.japanpost.jp/service/clickpost/
個人的にとてもオススメです。
というのも、金額が安く(一律185円)かつ、追跡もできますので、安く安心に郵送ができ、“郵便局に行ったり、切手を買ったりをする手間が必要ない”というのが一番の利点です。

郵送先の情報を入力して、WEBで決済をして、出力される用紙を印刷、貼り付けすれば、後はポストに投函するだけです。
日中を稽古時間で使っていたり、別の仕事で使っていたり、不規則な生活をしている人にとっては、“自宅で全て完結する”ので非常に楽です。

☆台本・スケジュール等は“紙面”でお送りして、誠意と熱量を伝える!
印刷・郵送の手間は、最適なツールを利用して、“短時間でなるべく安く”!

※現在はデータでの送付などの方が主流かと思いますので、必要に応じて最適な方法でお送りするのが良いかと思われます。


▼<一般公開情報・内部連絡事項>▼

主宰業務で触れた内容を、一般・関係者等の内部に公開・連絡をしていきます。


「一般に公開する情報」と、「内部に連絡する情報」の2つの公開・連絡をします。
気をつけている点は、‘見やすさ’‘思い出しやすさ’‘取り出しやすさ’です。

‘見やすさ’は、文字のまとめ方です。
項目をしっかり分け、括弧や記号、強調などを用いて分かりやすくまとめます。

‘思い出しやすさ’は、情報がキャッチーかどうか、印象・記憶に残りやすいか、という点です。情報は、出せば良いというものではなく、人に覚えてもらわないと意味がありません。
そのために、
外部に出す情報は‘印象に残りやすい、キャッチーな言葉でまとまっているか’
内部に連絡する情報は’端的に短く、要点をまとめてあるか‘
という点を意識しました。
今回のオーディションの情報が1番分かりやすいですが、

【ヒロイン募集オーディション】
のような、分かりやすくキャッチーなタイトルで目を引くようにしました。

’取り出しやすさ‘は、思い出したいときに’すぐに思い出せるような場所に情報を掲載しておく‘という点です。
外部に出す情報は、SNS等でURLを定期的に出すなど、情報にいつでもたどり着きやすくしておきます。
内部に連絡する情報は、現在だとLINEでの連絡が多くなってますので、LINEの「ノート」の機能を利用して、グループ内で共有をしやすくしておきます。

☆‘見やすさ’‘思い出しやすさ’‘取り出しやすさ’を意識して情報出しを!


▼<スケジュール連絡>▼

全体のスケジュールを関係者にご連絡していきます。
その際に作成したデータと合わせて、補足の説明を入れていきます。


項目に分けて、細かくスケジュールをお伝えします。
とにかく細かく、出演者の皆さまが’安心して公演に参加できるような説明’を意識しています。
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主宰業務<内部連絡事項情報チェック・オーダー>と同様の内容となります。

☆’安心して公演に参加できるような説明’を!


▼販促戦略連絡▼

チケットの販売計画を共有するようにします。
出演者の手売りが中心となってくる小劇場において、主宰者側がただ「売ってください」とお願いするのは無責任だと考えています。


主宰者側から、どのような宣伝ができる公演なのか、ということを明確に提示していきます。
また、どのようなスケジュールの中、券売を進めたいのかも提示します。
集客が出来るようになる、ということは出演者にとっても財産になります。
ただ公演を企画してお客さんを呼んで終わり、という公演ではなく、関係者にとって、業界にとって次に繋がる公演にしたいというのが長谷川が意識する点です。

今回、実際に関係者にご連絡した券売のご連絡が下記になります。
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☆関係者にとって、業界にとって次に繋がる公演に!


▼<精算>▼

公演終了後の各種精算です。
実際にかかった費用などをまとめて、損益の計算をしギャランティの分配をしていきます。


請求をいただいたギャラはすぐに支払う、ということは徹底しています。
長谷川自身が、フリーランスとして働き始めて1番困ったことが「ギャラの未払い」だからです。
下手をするとそれで食いっぱぐれる人も出てくるはずです。
お金周りの管理がどうしてもゆるいイメージがあり、その点に関しては払拭していきたいと考えています。
最後の最後の精算段階でトラブルが起こらないように、1番最初のオファーの段階で
・支払い方法
・支払い時期
の2点は必ず明記するようにしています。

併せて、実際にかかった費用を正確にまとめておくことを必ずしています。
どこに余分に費用がかかったり、逆に余ったりしたのかを把握しておくことで、今回公演の反省と次回公演の参考にすることができます。
この作業を何度か繰り返し経験すると、予算組みが正確にできるようになってきます。
制作者として、お金の管理がしっかりしている人の方が信頼を得やすいと長谷川は考えているため、特に意識してまとめています。

★精算表のテンプレ★


実際に今公演に使用した精算表を元にしたテンプレートです。

☆ギャラの支払いは迅速に!
実際にかかった費用を明確に把握する!

以上が制作業務に関しての長谷川の仕事術です。
皆様の公演のお役に立てましたら嬉しいです。
この仕事術は、あくまで長谷川独自の方法となります。これが絶対に正しい、というものではありません。
こちらをぜひ利用していただいて、各々の良いと思う仕事術を探って頂ければ幸いです。

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